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ツマグロヒョウモン・すみれの贈り物
   
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 長年すみれを栽培していると、少しずつですがすみれのクセが分かり、栽培を失敗することも少なくなってきました。しかし、病虫害、とりわけそうか病と多量に発生するヨトウムシには頭を悩ますところですが、この先長く栽培を続けていくためにも、農薬の使用はできるだけ少ない量で済ませたいものです。
我が家のすみれ棚では、ここ数年殺虫剤はほとんど使用することもなく、その分、すみれ棚の見回りを丁寧にやり、害虫を見つければもっぱら捕殺です。

1996年夏、その年も前年と同様40℃近くの猛暑の日が続きましたが、前年のことを考え、早々と寒冷紗をかけ、遮光と水やりには充分気を付けていたので、暑さによる被害はほとんどありませんでした。遅く定植したすみれも成長が早く、夏の終わりにはすっかり親株となり、例年になく良い状態で秋を迎えようとしていました。

  8月の末、そろそろ寒冷紗をはずす時期のため、いつになくすみれ棚を丁寧に見回っていると、見なれない幼虫を数頭見つけました。我が家のすみれ棚では初めて見る幼虫で、その姿からヒョウモンチョウの仲間だと思いました。
すでに5cmほどの体長に成長しており、背中の赤い線が特徴です。この大きさになるまで気がつかないとは私も間の抜けたことですが、気がつかないほどその年のすみれは生育旺盛でした。

 私は蝶に関する知識はありませんが、これまですみれの自生地で花時にすみれを食べているヒョウモンチョウの幼虫を見かけたことがあったり、すみれにカメラを向けていると、蝶が吸蜜にくることがたまにありました。その程度の蝶とのふれ合いです。
 
 さっそく近くに住む蝶マニアの方に電話を入れると、その幼虫は特徴からツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)らしいとのことです。本州、四国、九州、南西諸島に分布し、本州の分布の北限は三浦半島まで確認されているとのことです。東京都西南部の当地でも稀に見られることがあるそうです。迷蝶と考えてよいが、繁殖例はきわめて珍しいとのこと。2年続きの夏の猛暑、7、8年続く暖冬も影響しているかもしれない。と、教えを受けました。そして、ツマグロヒョウモンの雌は非常に美しいから是非見てみなさいとのことでした。

9月10日頃、幼虫の動きが鈍くなり、中旬頃から次々と蛹となり、黒褐色に金の斑点が光り、4頭の蛹がすみれ棚の周りで確認できました。
2週間ほどして蛹は排泄物を残して次々と羽化したようですが、成虫として確認できなかったので、最後の蛹を切り離して木の枝につけ食卓に置きました。




ツマグロヒョウモン ♀

私の妻はツマグロヒョウモンを「妻苦労ヒョウモン」と勝手に解釈し、鉱物に興味をもちだした娘は、金メッキされたように金色に輝く蛹の斑紋に大変興味をもち、蛹は三者三様の好奇の対象となって、羽化する日を待つこととなりました。

10月4日深夜、家の中に持ち込んで3日目、蛹は見事にツマグロヒョウモンに羽化しました。
息を吹きかけると一瞬はばたき、綺麗な雌の色相が目に入りました。
翌朝、家族は蝶の美しさに感嘆し、朝から何度もため息の連続です。
娘が学校に行くドアの開閉で部屋の空気が動き、それが刺激になったのか、朝日のあたるカーテンに弱々しく蝶が飛び立ちました。
指先に移し、ルーペで覗く・光に輝く鱗粉、毛・・・ヒョウモンチョウの中でも美しいと思われる、ツマグロヒョウモンの雌をじっくり観察できたのは幸せでした。色の変化は実に見事!! 前翅と後翅の重なる部分にピンクの色素を含んでいるのも図鑑には見られない発見でした。
幼虫で越冬するそうですが、真冬には-5℃近くまで下がることがある当地では繁殖することはできないようです。願わくはできるだけ南に向かって飛ぶように祈って、すみれの上に蝶を放ちました・・・・・・



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